犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.177

【犬飼いTIPS】ミックス犬は純血種より健康というのは本当? 最新の研究で判明した事実とは…

[2024/06/04 6:01 am | 編集部]

「ミックス犬は純血種犬より強い」とよくいわれますが、一概にはいえません。遺伝的多様性の利点がある一方、ミックス(交雑)であるがゆえに複数の遺伝病を受け継ぐリスクがあるからです。

実際の健康状態や寿命は遺伝的要因だけでなく、飼育環境や健康管理など、そのほか多くの要因によって決まります。また、これまでの研究では、明確にどちらが強いのかという結論には至っていません。

そんな状況のなか、最新の研究により真実が見えてきました。この研究によると、ミックス犬は純血種の犬より強いとは言い切れないという結論になっています。

どんな研究だったの?

この研究は、テキサスA&M獣医学・生物医学科学大学(CVMBS)が主導しました。

まず、Dog Aging Project(DAP)の「Health and Life Experience Survey」に参加した27,541頭の犬を対象に、純血種の約60%を占める25犬種が抽出されました。25犬種は以下のとおり。

ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバー、ジャーマンシェパード、プードル、オーストラリアンシェパード、ダックスフンド、ボーダーコリー、チワワ、ビーグル、ペンブロークウェルシュコーギー、ボクサー、シーズー、ミニチュアシュナウザー、パグ、ハバニーズ、キャバリアキングチャールズスパニエル、グレートデーン、グレイハウンド、ボストンテリア、シベリアンハスキー、シェットランドシープドッグ、イングリッシュスプリンガースパニエル、オーストラリアンキャトルドッグ、ドーベルマン


次に飼い主のアンケートデータを使用して、25種類の犬種それぞれにもっともよく報告される10種類の健康上の問題を特定し、これらの疾患の生涯有病率の推定値をミックスと純血種それぞれで比較しました。

研究から判明したこと

分析の結果、ミックスが健康上の問題を抱える可能性は、純血種と同じくらい高いことが判明しました。つまり、遺伝子プールが小さいからといって、純血種の犬がミックス犬よりも病気にかかりやすいわけではありません。

Dog Aging Projectの責任者でVMBSの小動物臨床科学部の教授でもあるケイト・クリービー博士は、「確かに、特定の犬種に頻繁に発症する疾患がいくつかあります。そのことから、純血種はすべてその疾患にかかりやすいという誤解が広まっていますが、実際はそうではありません」とコメントしています。

これら25犬種の飼い主が報告した健康における問題は、53もの症状になりました。しかし、いくつかの病状は、犬種別に特定された健康状態の10種に集約することができました。

純血種の犬でもっとも多く報告された10の健康問題は、歯石、咬傷、歯の破損、ジアルジア、変形性関節症、季節性アレルギー、耳の感染症、心雑音、白内障でした。

ミックス犬の場合もほぼ同じでしたが、心雑音と白内障の代わりに爪の裂傷とチョコレート中毒が含まれていました。

歯石や変形性関節症などの一部の疾患は、純血種とミックスでほぼ同じでした。しかし、一部の病状はどちらか一方に多く見られました。たとえば、純血種では咬傷、歯の破損が多かったのに対し、ミックスでは耳の感染症が多く見られました。

飼い主が報告した53の病状のうち、26は純血種とミックスの間で有意差はありませんでした。さらに、興味深いのは純血種の犬の飼い主の22.3%が、自分たちの愛犬には健康上の問題がないと報告したのに対し、ミックス犬の飼い主は20.7%であったことです。つまり、純血種の犬はミックス犬よりも健康であるということです。

研究による重要な発見

この研究のもっとも重要な発見は、どのような犬を飼うのかを検討する際、犬種は考慮すべき要素のひとつにすぎないということです。

新たに犬を迎えるときには、犬種だけでなく、体格、性別、飼育環境、ライフスタイル、社会的交流、運動量など、多くの要素を考慮する必要があります。

まとめ

ミックス犬が純血種の犬よりも健康だと思わている理由は、特定の犬種がよく知られた疾患を抱えやすいということでしょう。たとえば、ジャーマンシェパードやラブラドールレトリバーは股関節形成不全になりやすく、プードルは緑内障になりやすく、グレートデーンは胃拡張症になりやすいです。

確かに純血種には犬種特有の疾患が知られています。そのことが、純血種はミックスよりも弱いという俗説を生んでしまったのです。この新しい研究のおかげで、そうではないことが判明したのは。とても価値のあることです。

[編集部]