先日発表された気象庁の3カ月予報のとおり、今年の年末から年始にかけては、寒冬ということで例年よりも寒くなるようです。すでに寒さも本番ということで、暖房器具が大活躍といったところではないでしょうか。
一般的に、電気代は夏よりも冬のほうが高くなるのはご存じのとおりです。それは、経済産業省資源エネルギー庁が毎年発表している「エネルギー白書」の世帯当たりのエネルギー消費を見ても明らかです。冷房の占める割合が2.2%に対して、暖房は22.4%と10倍のエネルギーを使っていることになります。給湯を含めた熱需要が約半分ということで、いかに冬に電気を使用しているかが理解してもらえるかと思います。
より具体的にいうと、冷房と暖房を使用する期間、さらにつくり出す温度差の大きさにも関係します。下記の図は、東京の最高気温の推移表です。冷房の期間は7月~9月くらいの約3カ月間で暖房の期間は12月から3月くらいの約4カ月間となり、暖房を使用する期間のほうが長くなります。さらに、つくり出す温度差についても、夏場に室内温度を35℃から28℃に下げるためには温度差は7℃になります。反面、冬場に10℃を20℃にすると温度差は10℃になります。この差がそのまま光熱費(電気代・ガス代)の差にもなるのです。
もうひとつ、暖房機器は冷房機器よりも種類が豊富ということもあります。夏はエアコンと扇風機くらいしかないのに対して、冬はエアコンに加え、ファンヒーター、ホットカーペット、コタツ、オイルヒーター、ストーブ、床暖房と多様だということもあるかもしれません。
これからの季節は、クリスマスやお正月とイベントが目白押しです。では、お財布に厳しいこの冬を、どうしたら賢く乗り切れるのか。今夏の「スーパー猛暑を乗り切る! 電気を賢く使ってペットとジブンの快適空間をつくる」でお世話になった、愛猫家でもある“電気のプロ”東京電力エナジーパートナーの中村剛さんに再びお話しをうかがいました。
中村さんによると、暖房機器の効果は、「家+人+機器」の組み合わせで考えることが重要なんだそうです。家の基本的な考えは、昔と今とでは大きく異なると言います。昔の日本の住宅は暑い夏を涼しく過ごすことを重視していましたが、現在は、高気密・高断熱によってエネルギーの無駄をなくし、計画的な換気により快適な住まいを実現するという考え方に変わっています。でも、家を替えるのは手軽にできるものではありません。
そこで重要になるのが、「機器」について考えてみようということです。前述のとおり、暖房機器には多くの種類があって、それぞれ経済性・安全性などの面でメリット・デメリットがあります。下図は暖房方式のメリットとデメリットをまとめたものです。
「使い方が正しくなければ、満足な暖房効果は期待できません。例えば、オイルヒーターは、断熱性の高い部屋で暖房をつけっぱなしという条件で使わなければ、効果は半減してしまいます」と中村さん。空気の対流が少なくダニやホコリが舞い上がらないということで利用者も多いと思いますが、条件が整わないと、かえって効率を悪くする=電気代がかかるということになるんですね。ちなみに、オイルヒーターの消費電力は1,000W程度でドライヤーとほとんど変わらないレベルです。ドライヤーで部屋を暖める人はいませんよね?
やはり部屋全体を温めるには、エアコンが効果的ということになります。「でもエアコンって電気代がかかるんでしょ?」と思うかもしれませんが、じつはそんなことはないのです。上の図のとおり、暖房機器のコスト比較をみても、エアコンが最も効率的にエネルギー使っている=暖房代が安いということがわかってもらえると思います。この表は通年エネルギー消費効率(APF)といわれる、省エネ性能を表す値として使用されていますが、自動車の燃費のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。
また、エアコンの省エネ性能はどんどん進み、行き着くところまできたともいえるのです。なので、テレビなどのAV製品のように「もう少し待ってみる」必要はなく、いつ買っても省エネ効果抜群のエアコンであることは間違いないのです。
ただし、ポイントもあるようです。「エアコンは暖房能力で選ぶのが正解です。冷房性能にはあまり差はないのですが、暖房性能には大きな差が出ます」と中村さん。確かに、APF5とAPF7とでは、まったくレベルの違う製品とも言えます。よく「エアコンなんて冷えれば(暖まれば)いいや」と考え、足りないときに補助機器を追加したりしていますが、購入金額は削減できたとしても、電気代の面からみると効率を下げて、かえって損しているということにもなりかねませんね。これから10年以上使うものなので、よいエアコンを選びたいものです。
最後に、中村さんはヒートショックについて話してくれました。東京都健康長寿医療センター研究所の報告によると、ヒートショックによる死亡者数は年間1万7000人に及び、その数はなんと交通事故による死者数の3倍以上になるといいます。
「家の中の温度変化を最小限にすることは健康面でもメリットは大きいと思います。我慢のような無理な省エネではなく、省エネ性能が向上した機器を使うことで、快適な暮らしが実現できるということを、もっと考えていきたいですね」と中村さん。
確かに、“節電こそが正義”で、エネルギーを使うことが悪いようなイメージはあります。ただ、本当に大切なことは、私たちがエネルギーを適切に使って、快適で健康に暮らすことだということですね。
ちなみに、中村さんはちょっとした工夫をしています。ヒートポンプ式の床暖房を入れているときには、オットマンにフリースをかけておくそうです。そうすると、簡易こたつになって、愛猫の隠れ家になるようです。これも暮らしのアイディアですね。ほかにも、乾燥する時期でもあるので、湿度も保つとよいということです。この時期は猫も風邪を引きやすくなるので、加湿器などを適度に使って人も猫も快適な冬を過ごしたいですね。