広がる「猫ブーム」に潜む危うさとは?

[2018/01/15 6:00 am | 編集部]

広がる「猫ブーム」に潜む危うさとは?

YOMIURI ONLINE| 2018/01/07

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

この記事は、昨今の「猫ブーム」に警鐘を鳴らす内容になっています。確かに、「ネコノミクス」という造語が飛び交い、悪ノリとしか思えないような状況でもあるように感じます。ブームを盛り上げている私たちメディアの責任も大きいのですが……。

「かわいさ」を強調させるため、テレビ番組では生後45日前の子猫が出演しているケースが多く見られます。現に、みなさんもご存じの動物バラエティ番組ではスタッフがネットで出産情報を探し、「離乳後~生後45日までの子猫がいたら番組に出てほしいのでテレビ局に連れてきてほしい」とブリーダーに直接依頼してくるそうです。

もちろん、健全なブリーダーはそんな依頼を受けるはずはないのですが、知識のない、またはビジネスとしか考えていないブリーダーは積極的に受けています。それを自慢するように紹介しているブリーダーのホームページを目にすることもありますが、それは自ら健全でないとアピールしているようなものなのです。

「動物の愛護及び管理に関する法律」では、「第22条の5 犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は猫であつて出生後56日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。」としています。今回の問題は、販売ではなくテレビ番組出演なので、これに抵触せず問題ないと考えているのかもしれません。しかし、なぜ生後56日という期間を設定しているかを考えるべきではないでしょうか。

スタジオに連れてこられた子猫は、慣れない環境下で、不特定多数の人に触られたり、ほかの猫と接触、あるいは同じ空間で過ごすなどして、健康に悪影響を与えかねない状況に置かれています。その時期は、ちょうど母猫からの免疫が切れるか切れないかの微妙な時期でもあります。生後2カ月目に1回目のワクチン接種をして、免疫ができる時期を過ぎていなければ感染症にかかってしまうこともあるのです。

子猫として愛らしさが増す時期ではありますが、健全なブリーダーであれば、ワクチン接種前に動物病院以外の場所へ連れ出すことはありません。

また、私たちネットメディアにも同様のことがいえます。DeNAの医療、女性ファッションキュレーションメディア問題も記憶に新しいかと思いますが、ペット分野でも同じことになっています。知識のない人が思い込みや信頼性の低い記事を書いたり、目を引く写真や動画を意図して撮っています。そして、それを集めて掲載するサイトさえあるのです。SEO(Search Engine Optimization=サーチエンジン最適化)を駆使し、PV(Page View=特定のページが開かれた回数)を無理やり増やし収益にする。これは、DeNAの問題とまったく同じ構図だと思います。

もちろん、メディアを維持するために視聴率やPVを上げることは必要だと思います。しかし、お金儲けのために煽るだけでは、ブームが終わったときに悲惨な現実と向き合うことになります。動物愛護団体は殺処分ゼロを目指し、自らの生活を犠牲にしてまで活動している人もいます。

しかし、いっこうにゼロにはなりません。それは、飼い主として愛情を注ぎ、終生飼育する覚悟と責任を「愛らしさ」とともに伝えていないからです。供給側は、動物の生態・健康などを無視したコンテンツの制作に自主規制を設け自粛していくべきです。そして、私たち消費者は単にブームに乗るのではなく、どうしたら理想的な出会いができるのか、どうしたらともに健康で幸せな生活を送れるのかを考えるべきではないでしょうか。

ペトハピは、殺処分をゼロにするには、上流である繁殖の現場を健全化させることだと考えています。そのために、真に健全なブリーダーがいること、そして彼らが何を考え純血種を守りブリードしているのかを知ってほしいと考え「太鼓判ブリーダー」として紹介し続けています。

ペットを取り巻く現状を私たち消費者が「知り」、「行動する」ことで不幸な子猫や子犬が産出されることが少なくなっていきます。そうなれば、必然的に流通・販売のカタチも変わっていくのではないでしょうか。そして、それが殺処分ゼロを実現する確実な一歩だと思うのです。

[編集部]