情熱人 Vol.2

ペット可賃貸住宅の開拓者

いやさか不動産 代表取締役 神田美佳

[2016/5/16 06:00 | 阪根美果]

JR山手線・高田馬場駅から徒歩3分。にぎやかな早稲田通りに面しているビルの2階に「いやさか不動産」がある。猫のロゴが目印で、カフェのような雰囲気が歩く人の目を惹く。地元密着型の不動産屋で、主に副都心沿線の西早稲田・雑司が谷・池袋・要町・千川・小竹向原と、山手線の高田馬場・目白・池袋の賃貸住宅の物件を扱っている。

スタッフは、社長の神田をはじめ全員女性。女性ならではのきめ細やかな視点でサービスを提供し、安心して部屋探しができるよう、アドバイザーとしてサポートしてくれる。ときどき出勤する、ロシアンブルーのTONO課長(唯一のオトコ)とHIME課長もスタッフの一員である。

いやさか不動産は、ペット可賃貸住宅を専門としているわけではない。ここでクローズアップするのは、賃貸住宅を満室にする新たな戦略として、「ペット可、制限無し&居住者専用のドッグラン付き」というペット可賃貸住宅の経営に携わる神田のもうひとつの顔である。

神田は、中古マンションを小型犬・中型犬・大型犬・猫の飼育、うさぎ・フェレットも相談可、多頭飼育も可能というペット可の物件に変えていく。そして、居住者専用の広いドッグランもつくってしまう。

それらの物件は、空室ができてもすぐに埋まる。神田の開拓は、賃貸住宅が生き残るための新たな道をつくるだけでなく、トラブル回避のために制限を設けるペット可賃貸住宅の経営方針を根本から覆すものである。そんな開拓者・神田のストーリーを追った。

いやさか不動産として独立するまでの道のり

いやさか不動産
代表取締役
神田美佳

京都生まれの京都育ち。バブル崩壊後の就職大氷河期時代の中での就職であったが、運よく銀行に入行して窓口業務に就いた。上下関係が厳しく、上司からの罵倒を受けながらノルマをこなした。「このつらさを経験したから何でも耐えられる」という。

その後、結婚を機に東京へ移り住んだ。しばらくはメーカー系商社にOLとして勤めるが、ふと自分の人生を考えた。このままでいいのだろうかと、真剣に悩んだ。これが人生のターニングポイントとなる。夫が賃貸住宅のオーナーになったこともあり、不動産業界に興味を持ち始めた。

幼いころから部屋の間取りを見るのが好きであったこともあり、不動産を学んでみることにした。まずは、債権回収(金融機関の不良債権の資金化)の会社に入り競売物件を勉強した。その後、念願の不動産の賃貸管理会社に入り、募集から契約、管理、更新、家賃回収、退去まで一連の流れを勉強した。

家賃滞納者がいると思えば、1年分の家賃を先払いする人もいる。ペット可の物件では犬猫はもちろんのこと、大蛇を飼う人もいる。「世の中にはいろいろな入居者がいる」と改めて実感した時期であった。独立するにはまだ経験が必要と考え、仲介業者である賃貸不動産会社への転職活動を始めた。

だが、面接に行くもことごとく不採用。つらい日々が続いた。ようやく就職したのは、若い男性ばかりの完全歩合制の会社である。立地条件が悪く、築年数不明の古いビルの最上階に店舗があった。エレベーターはミシミシと音を立て、いつ停止してもおかしくない状態。「本当にこれが部屋を紹介する不動産なの?」と不安に思いながら、勤務を始めた。

その不安は的中する。街によくある不動産情報の立て看板。勤務した不動産屋の看板に出ている物件は、すでに決まったものばかりで、完全なおとり広告であった。ブラック企業と呼ばれても仕方のないような経営。神田にとってはこの経験が反面教師となり、いよいよ独立への道を歩き始める気持ちが固まったのである。

こうして、2011年9月1日、お客様のための仲介業者「いやさか不動産」がスタートした。

まずは自宅であった分譲マンションからスタート

神田が夫とともにペット可賃貸住宅の経営に携わることになったのは、神楽坂に購入した分譲マンションを賃貸に出したことがきっかけだという。自身も当時からロシアンブルーを飼っていたため、ペットの飼い主としての気持ちも十分理解していた。そだから、ペット可賃貸住宅として貸し出すことに何の抵抗もなかった。

その物件は募集を出してからすぐに問い合わせがあり、小型犬を飼う人と契約を結ぶことになる。住居中や数年後の退去時にも、問題が生じることもなく、ペット可賃貸住宅にしたマイナス要素は見当たらなかった。逆に、ペット可にすることで、空室がすぐに埋まるプラス要素を大きく感じたという。地域差はあるが、特に郊外ではペット可賃貸住宅の供給が少ないと感じていたこともあり、これを機にいくつかのマンション経営に乗り出した。

夫が経営する会社がオーナーとなり、中古マンションを購入。そして、そのマンションを神田の考える理想のペット可賃貸住宅に変更し、いやさか不動産で広告を出す準備をした。すでに入居中の住民には数カ月かけて告知をし、変更に関する承認を得るようにした。反対があるかと思っていたが、意外にもどんな種類のペットが可能なのか、何頭まで飼えるのかという質問が多かったという。「ペットを飼いたいと思っている人が多い」と神田はあらためて感じたのである。

理想的なぺット可賃貸住宅の開拓

東京都心はワンルームでのペット可賃貸住宅の供給が多く、現在では、借主が質・条件のよい物件を選べる状況だという。空室を埋めるために、ペット可にするオーナーが多いのが理由である。

借主が選べる立場のためいやさか不動産では、掲載前に広告依頼のあった物件をスタッフが視察し、よいと思える物件だけを掲載している。しかし、ワンルームが多いこともあり種類や頭数に制限がある。さらに、大型犬や多頭飼育可の物件は少ないという。

郊外では、大型犬や猫、多頭飼育に対するマイナスイメージが顕著で、それを避けるオーナーが多い。敷金償却を条件にしていても、制限がはずされることはほとんどない。いずれにしても、ペットを飼う人が賃貸住宅に住むには何らかの制限が設けられているということだ。

ペットを飼う人が望んでいることは「好きなペットを堂々と飼いたい」という思いにほかならない。大型犬や猫、多頭飼育ができる物件があれば、その思いもかなえることができ、空室もすぐに埋まるのではないか。そこに勝機があると感じた神田は、「飼育制限あり」という既成概念を打ち破り、ペットとともに生きるという現在の考え方にマッチした、ペット可賃貸住宅の開拓に乗り出した。

そして、それがすぐに確信へと変わっていったのである。小型犬・中型犬・大型犬・猫の飼育可能、うさぎ・フェレットも相談可能、2匹以上も可能な物件。最近では、それに加えて居住者専用の広いドッグラン付きの物件の募集を開始した。すると、神田の手がける物件は大きな反響とともに、それぞれの物件はすぐに満室となった。それは、ペットの飼い主が望む、理想的な条件の物件だったからである。

どの物件も都心に通勤で通える場所にある。制限なし&居住者専用の広いドッグラン付の物件は、特に大型犬や猫、多頭飼育の飼い主にとって理想的な物件である。

ドッグランはマンション駐車場の横に現在建設中であるが、犬の足に負担がかからない芝生が敷かれ、大型犬も走り回れる十分な広さを確保。きちんとした利用規約もつくられる。ペットを介して、住民同士のコミュニティの形成にも役立つという。

「ちゃんとペットと向き合っている借主はモラルが高い」と神田は性善説的に考えている。大型犬や猫、多頭飼育の飼い主はなかなか物件が見つからず苦労しているので、入居した際にはしっかりモラルを守ってペットと暮らしてくれるのだという。そうしたことから、ペット可賃貸住宅には制限はいらないという結論に至った。

実際に、いくら種類や頭数を制限していても、モラルの低い人が借主であれば、問題は必ず起こるのだという。

だからこそ、賃貸契約をする前にモラルのある人がどうか、しっかりと見定めることが重要だという。そして、貸主ときちんとコミュニケートすることで、ペット可賃貸住宅に起こる問題は、解決できると信じている。

空室がでてもすぐに埋まるペット可賃貸住宅は、満室が常にキープできるため、オーナーの健全経営にもつながる。モラルの有無を見定めるには、仲介する不動産会社の力量も問われるが、空室に悩む賃貸住宅のオーナーの新たな視点として、制限なしのペット可賃貸住宅に注目してもらいたいと語る。

いずれは高齢者向けペット可賃貸住宅を

神田には、目標がある。一団の土地を仕入れ、もしくは転借して、高齢者が独りぼっちにならないような高齢者向けの賃貸住宅をつくりたいという。おのおのの私生活は尊重し、何かあったときに対応できるよう常駐の管理人を置く。団らん室をつくる。食事処(自販機等も)も設置する。高齢になればなるほど、大きな家を維持していくのはとても難しい。自分の生活空間があれば、賃貸でもいいと考える人も多い。

しかし、高齢者は入居審査がとても難しく、ほとんどが年齢制限にひっかかってしまう。夢が実現した際には、「制限を設けないように、入居審査時にその人となりをちゃんと見て判断する」という。もちろん、そこはペットとも暮らせるようにするという。「残りの人生を潤いのある毎日にしてほしいから」と熱く語った。神田の開拓はこれからも続く。

いやさか不動産
免許証番号:東京都知事免許(1)第93229号
会員:(公社)全日本不動産協会
   (公社)不動産保証協会

住所:東京都新宿区高田馬場2-14-3 三桂ビル2F
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