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犬と猫の病に立ち向かう「全知全能」と言われる獣医師

[2016/02/09 10:42 am | 編集部]

近年の飼育環境の変化でペットの高齢化が進行し、飼い主が望む獣医療が変化しつつある。従来は大学病院で行われていた二次医療は、民間の獣医師の専門化により、ホームドクター的な一次医療を超えて可能になってきている。さらに大学病院やほかの専門病院との連携により、より高度な獣医療を提供している獣医師も増えてきた。

多様化・細分化する獣医療。飼い主は「どんな病院を」「どんな獣医師を」選ぶべきか。知識・技術は当然だが、ペットとともに飼い主も思いやる心も望まれる。多くの飼い主たちが信頼を寄せて全国から集まる病院、ペット業界のプロたちが推薦する病院、そして獣医師が信頼して紹介する病院にこそ、その答えがあるのだ。ここでは、そんな「選ばれし獣医師」を紹介していく。

幅広い分野においてすぐれた知識と技術を持つスペシャリスト

1989年、大阪に誕生したネオベッツVRセンター。獣医療では初の二次診療専門の高度医療センターとしてオープンした民間施設である。この地域に密着したセンター病院で、幅広い分野において活躍をしているのが、宇根副代表である。脳神経外科、外科を中心に全般の治療にあたっている。

「幅広い分野の治療を担当しますが、広く浅くではなく、やるからにはすべての分野で高いスキルを保つことが私の信念です」と力強く語る。ほかの誰よりもよい結果を残したいと、そのための努力は惜しまない。深い知識とすぐれた技術、そして、高い志を兼ね備えたスペシャリストである。ネオベッツVRセンターの「全知全能」とも言える獣医師、宇根副代表に話をうかがった。

宇根 智 センター副代表
1991年:山口大学農学部獣医学科卒業
     山口大学大学院連合獣医学研究科入学
1993年~1996年:米カリフォルニア大学留学
1995年:山口大学大学院連合獣医学研究科卒業 獣医学博士号取得
1997年:山口大学助手
2005年:山口大学助教授
2007年:山口大学准教授 山口大学動物病院副センター長
2008年:ネオベッツ入社 VRセンター勤務
2011年:ネオベッツVRセンター長就任
2014年:ネオベッツVRセンター副代表就任
<所属学会>
日本獣医学会 獣医麻酔外科学会 日本移植学会 獣医神経病学会など

・獣医師を目指したきっかけ

「ニュージーランドで牧畜を」

いつのころからか、ニュージーランドで牧畜をしながら、生活できたらいいなと思っていました。ニュージーランドはとても自然環境や治安のいい国です。ご存じのとおり、羊もたくさんいます。それを実現するためにどうしたらいいかを考えたときに、「獣医師」になるのはどうだろうかと考えたのです。それが獣医師を目指したきっかけですね。

その後、大学に入って獣医師になるための勉強をするうちに、小動物の臨床(診察・診療)に興味がわき、そちらの道に進もうと方向転換しました。少しずつ自分の夢が形を変えていったということですね。

・二次診療である高度医療部門での診療を選んだ理由

「研究に強い興味を持っていた結果」

大学の学部を卒業後は、一次診療の病院で働くことを考えていました。でも、学生時代に携わっていた研究というものに強い興味を持っていて、それをもう少し追求してみたいと思い、大学院に進むことを決めました。

研究を進めるなかで、助手、助教授、准教授となり、ずっと大学に所属していましたので、一次診療よりは二次診療に重点を置いた場所にいたことが大きな理由だと思いますね。その後、さらに臨床の知識やスキルを高めるために、二次診療の民間病院であるネオベッツVRセンターに移籍したということです。

・脳神経外科を専門としている理由

「自分の中では専門意識はない」

私のスタートは、腎移植や膵移植と言われる移植関連の軟部外科という分野です。その後は臨床をやっていく上で、軟部外科はもちろんですが、脳神経外科の疾患に携わる機会が多くあり、そのニーズにできるかぎり応えようとしてきました。その結果、一時期から脳神経外科に強い獣医師と言われるようになってきました。

ただ、自分としては「外科」という大きなくくりの中で、細分化されたいくつかの診療科の疾患を何十年と診てきていますので、「脳神経外科の専門医」という意識はあまりないですね。“ニーズがあればそれが何であろうと応える”という信念のもと、やるからにはすべての分野で高い知識とスキルを身に付けるよう努力してきましたので。それが脳神経外科、外科を中心に全般といわれる理由ですかね。

これからも「外科」の分野において、オールマイティーでありたいと思っています。ほかの誰よりもよい結果が残せるように、レベルの高いオールマイティーであるよう努力を続けます。飼い主さんへの責任を考えれば、そこに妥協はありませんから。

・治療をするうえで大切にしていること

「飼い主さんの選択を一番よい結果に繋げる」

飼い主さんには動物のおかれている状況をできるだけ理解していただき、動物にとっても飼い主さんにとっても、どうすることが一番よい選択肢になるのかを相談しながら選んでいただいています。その選択を、一番よい結果に繋げられるようにしたいと常に思っていますね。

医療は一般の生活とは違うので、わからないことがたくさんあります。その中で選択しなければならないのは、すごく酷なことで簡単なことではありません。しかしながら、私はそれを考えてもらうことが重要だと思っていますので、できるだけ理解していただけるようにお話をしています。何よりも動物も大切な家族の一員ですからね。

・大学病院とネオベッツVRセンターとの違い

「センターでは何よりも臨床(診察・診療)が優先される」

大学病院は、制度上、教育・研究が第一の目的とされているので、臨床は制限される部分もあります。その部分では、飼い主さんや獣医師からの要望に応えらないこともあると思います。

しかし、当センターのような民間病院であれば、できるだけ要望に応える方向に転換することが可能です。すべてに応えられているわけではありませんが、できるだけ要望に沿おうという方針があるので、大学よりは一次診療に近いものがありますね。何よりも臨床が優先されるということです。

もちろん、私たちも若手を育てたり、臨床研究もしますが、目的は一緒でもその比重が大学病院とは違うのです。私が現在ここにいるのも、できるだけ多くの臨床をして、動物たちを救いたい、より納得のいくかたちで臨床をしていきたいと考えたからです。そういう意味では、さらに二次診療としての民間病院が増えることを望みます。

・診療している主な病気

「症例数は年間約700例」

ここ一年でいえば、軟部外科が一番多いですね。このセンターはいろいろな診療科があるので、その中で依頼される疾患はまちまちです。

私の場合は、幅広い分野をオールマイティーに診ることができるので、センター内のスタッフの動向により動きも変わってきます。ある時期は整形外科であったり、ある時期は脳神経外科であったり、ニーズとセンター内の状況が関係します。ですから、私の場合は毎年、診察している主な病気が変わりますね。

・飼い主へのアドバイス

「保護者として義務と責任を果たすことが大切」

動物病院を選ぶ際には、その病院の獣医師やスタッフと飼い主さんが信頼関係を結べるかどうかが、一番大切なことだと思います。いくらネットや口コミの評価がよくても、飼い主さんが信頼できない病院では意味がありません。何度か通えばご自身との相性がわかってくると思いますので、それを理解したうえで最良と思える選択をしてください。

動物は言葉を発しません。飼い主さんは動物たちの保護者です。保護者として、しっかりと獣医師・動物病院と向き合ってください。また、ご自身と動物のためにもっと努力をしていただきたいですね。動物病院探しもそうですし、その動物を健康に維持するということも容易なことではありません。まして、病気になったときに後悔のないようにするためには、飼い主さんの努力がとても必要なことです。

まずは、飼い主さんの努力で防げる病気を防ぐこと。その努力をされている過程で、お手伝いできることがあればお手伝いさせてくださいというのが、獣医師という職業だと思っています。それがあってこそ、獣医師やこのネオベッツVRセンターのような病院が存在する意味があると考えます。まずは努力するという気持ちを持つことが大切です。

そこには動物を飼った以上、保護者としての義務と責任が生じるということも含まれています。その義務と責任を果たすために、大変だとは思いますが、その動物に対する知識を深めていただきたいし、必要なことは実践していただきたいです。それが、広い意味において、動物にとっても、人間にとっても、社会にとってもよい方向に向いていくことだと考えています。動物と共生するには保護者としての努力がとても大切なのです。

・今後の展望

「自分ができることを真摯にやる」

私自身はこれからも知識や技術などのスキルを伸ばして、より多くの動物たちを救えるようにしたいですね。飼い主さんの要望に、もっと応えられるようになりたいということでもあります。センターとしては、これまで以上に飼い主さんや獣医師の要望に添えるかたちの病院づくりをしたいと思っています。

また、大きな視野では、日本を含め世界において、獣医療がもっと発展するように、社会の中で認識してもらい、役立つ存在になればいいなと考えています。これらすべてにおいて、自分ができることを真摯に取り組んでいきます。

・副代表にとって「動物」とは?

「人生の中で一番大事なもの」

自分の人生の中で、切っても切れない一番大事なものなのでしょうね。今までもずっと付き合ってきたし、これからもずっと付き合っていくものだと思っています。

【ネオベッツVRセンター】
住所:〒537-0025 大阪府東成区中道3-8-11 NKビル
TEL:06-6977-3000(ホームドクターがHPから予約)
最寄り駅:最寄り駅:地下鉄長堀鶴見緑地線 JR大阪環状線玉造駅 徒歩5分
URL:http://www.neovets.com

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